PLAYER'S HISTORY
日本代表選手ヒストリー
日本代表の司令塔を務めるのは、身長181センチ、体重91キロの田村優。的確にスペースをえぐるパス、キックの精度、何より周りとシンクロする意識を真骨頂とする。
「僕は、皆がいいプレーをしないと、僕もいいプレーができない。皆にいいプレーをしてもらわないといけないので、(必要なことを)言います。僕は身体能力的に優れてはいないので、皆にサポートしてもらわないといけない。皆にいい状況を作ってもらって、最後に僕がいいプレーをする」
1989年1月9日に愛知県で生まれた元サッカー少年。幼少期は母方の親族が集まる沖縄に親しみ、親元を離れて入学した國學院栃木高校でラグビーを始めた。
明治大学を経て2011年に加入したNECでは、ルーキーイヤーから活躍。翌年には当時のエディー・ジョーンズヘッドコーチに認められ、日本代表へ初選出された。2014年のイタリア代表戦勝利、2015年のワールドカップイングランド大会での南アフリカ代表撃破を出場メンバーとして経験したが、インターナショナルプレーヤーとして名を挙げたのはそれ以降のことだった。
2016年、サンウルブズと契約。国際リーグのスーパーラグビーに日本から挑むこのクラブでは、田邉淳アシスタントコーチと練習時の動画をチェックしながらゴールキックの安定感を高めた。全方位的にボールを動かす戦術にもなじみ、持ち前の技能を活かした。同年6月の日本代表ツアーでは、マーク・ハメットヘッドコーチ代行のもと正スタンドオフとしてプレー。ジェイミー・ジョセフ現ヘッドコーチ率いる2016年秋からの日本代表でも、ファーストチョイスであり続けた。
選手が左右にまんべんなく散り、スペースへ果敢にキックやパスを通すのが現日本代表のスタイル。キックした先へは防御の網を素早く張ったり、パスを投げる前には攻撃陣形を整えたりと、複数人が連動して動くのも不可欠だ。田村の「皆がいいプレーをしないと、僕はいいプレーができない」は、その隊列を仕切る者の素直な心境だろう。
2018年6年にイタリア代表と再戦した際は、前半17分にキックカウンターから理想的な攻めを披露する。左から右、右から左へと展開するなか、田村は手前に立った味方ランナーの陰から飛び出すように駆け上がってパスをもらい、さばく。フィニッシュに直結するシーンでも、フッカーの堀江翔太のバックフリップパスを深い位置で受け取り、追いすがる防御をひきつける。最後は左大外のスペースを快足選手3名が攻略し、ナンバーエイトのアマナキ・レレイ・マフィがインゴールを割った。
「チームとして色々なことを積み上げる。細かい部分にこだわってやっていきたいです」
ワールドカップを間近に控えた網走合宿では、攻めの陣形をさらにブラッシュアップ。リーダー陣の1人として、周りとコミュニケーションを取りながら高強度の実戦練習を進める。
「ちょっとでもよくなるように練習を頑張る、というところです。(直前期のため)大きなステップアップはそんなにないと思っていますので、ちょっとずつ。試合もないのでリラックスもできますし」
グラウンド全体に目を配り、声を交わし、繊細なタクトさばきで強豪国を狂わせたい。
(文=向 風見也)
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