PLAYER'S HISTORY
日本代表選手ヒストリー
日本人の母とジンバブエ人の父との間に生まれた松島幸太朗は、日本代表でデビューを果たす前から日本の至宝と言われてきた。2大会連続出場となる2019年のワールドカップ日本大会でも、主力バックスとしてクールに期待に応える。
漫画のようだった。神奈川の桐蔭学園高校の一員として出場した全国高校ラグビー大会では、自陣ゴールライン付近から走り出してそのまま敵陣インゴールを割るという「100メートル独走トライ」を実現してしまう。
幼少期に滞在した南アフリカで楕円球と出会い、中学2年で東京のワセダクラブに入った、スーパーボールのように弾むランナー。間もなく「次世代のジャパン」と讃えられながら、高校卒業後は日本の大学へは行かずに南アフリカのシャークスアカデミーで武者修行。現地では、同国の20歳以下代表に選出されかかったが、「長いこと日本に住んでいて、友達もこっちにいる。国と言えば、日本をイメージします」と日本を選んだ。
当時のエディー・ジョーンズヘッドコーチ率いる日本代表に選ばれたのは2013年秋。同時期に帰国し、日本のサントリーに加わった。2015年のワールドカップイングランド大会では、過去優勝2回を誇る南アフリカ代表との初戦に「知っている選手が結構多かった」と落ち着いた態度で臨んだ。後半29分には、持ち前のランニングスキルで鮮やかなサインプレーを成立させ、歴史的勝利にも貢献した。
「きちんと1試合、1試合、目立つように、安定性を持ってやっていれば、自分的には満足です」
2016年以降はこう口にし、大きく変わる日本ラグビー界で己のパフォーマンスを保ってきた。日本のスーパーラグビー参戦でシーズンオフや鍛錬期が限られるなか、松島は国内シーズンの時期にフィジカル強化に着手するなど、世界基準の力をつけるべくタイムマネジメント。酒を飲むのも、チームの優勝時など特別な時のみとした。
「怪我をしちゃうと、4週間ほどはアウトすることになる。しっかりと、自分で判断しないといけない」
本職のポジションは最後尾のフルバック。こちらには本人も強いこだわりがあると語っていた。もっとも現体制下では仕留め役のウイングでプレーしそうで、指示行動を全うせんとするプライドも維持している。
「各ポジションでハイレベルなものを求められているなか、ウイングでも結果を出せているのはいいことです。頑張ってはいますけど、それでも空回りしないよう、自分の仕事を理解して試合に臨み、試合中は(その都度)次に何をすべきかをしっかり考えるようにしています」
いかなる状況においても、慌てず、淡々と、ナイフの走りを繰り出す。
(文=向 風見也)
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