PLAYER'S HISTORY
日本代表選手ヒストリー
ラグビー日本代表の茂野海人は、強気の姿勢をグラウンドで表現する。身長170センチ、体重75キロの28歳。初のワールドカップ出場へ静かに燃える。
警察官の父のもとで生まれ育ち、地元の大阪の岬ラグビースクール、岬中学校を経て島根の江の川高校(石見智翠館高校)へ越境入学。大東文化大を経て入ったNECでは、2015年にニュージーランドへ留学した。現地では接点でボールをさばくスクラムハーフとして、地域代表選手権に出るオークランド代表へ選ばれた。密集脇へ自ら仕掛ける攻撃的なスタイルが受け入れられ、もともと好きだったラグビーの楽しさを再確認できた。
日本代表デビューを果たしたのは、その翌年の6月。強豪のスコットランド代表とぶつかると、自陣深い位置からの美しい連係でトライを決めた。
しかし、好事魔多し。2017年にNECからトヨタ自動車へ移るも1年間、国内トップリーグの公式戦には出られなかった。大まかな背景は「移籍の経緯と当時あった移籍規定との相性の不一致」だった。「スキルの向上、身体作り(に力を入れている)。体調もいいです。チーム内でしっかりと(トレーニングを)やれているので、来季は貢献できれば。いいプレーをしていたら、(代表へは)自然と呼ばれる。2018年のトップリーグではしっかりと試合出でてやるべきことをやって、2019年に出られるように頑張るだけです」
雌伏の時も何とか前向きに過ごしたが、プレー機会の喪失はナショナルチームの選考に影響した。2017年春の次に茂野が日本代表のジャージィを着たのは、復帰後の2018年11月のことだった。
「輝きを取り戻したいです」
こう語って臨んだワールドカップイヤーは、スーパーラグビーに参加する日本のサンウルブズで試合経験を積んだ。「ゲームタイムが欲しい」としていた茂野にとっては願ったりかなったりの状況だった。日本代表と同種の戦術を用いる集団で、テンポ良い試合運びを披露。候補選手の絞り込みを続ける代表チームにおいて、スクラムハーフの定位置争いでも一気に存在感を高めた。7月以降は、パシフィック・ネーションズカップのフィジー代表戦、大会登録メンバー入りを決めた後の南アフリカ代表戦で、日本代表の背番号9をつけた。
「経験値も多く積めましたし、試合に出られない期間も相手の動きを分析したり、練習で『(主力組の)ディフェンスのここが弱い』と感じたらそこを自分が突くことで教えたりと、チームにどうコミットするかを考えながらできました。ラグビー選手として成長できました」
激動の4年間をこう振り返った茂野。チームマンとしても献身するが、本当に狙うのはスターターとして白星を掴むことだ。
(文=向 風見也)
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