PLAYER'S HISTORY
日本代表選手ヒストリー
仮に戸惑っていたとしても常に冷静に映る顔つき、格上相手に力を発揮できる勝負強さ。ラグビー日本代表の松田力也は、このような長所を持ってラグビーワールドカップ日本大会への挑戦権を掴んだ。
本番直前、淡々と言った。
「すごく楽しみな部分が大きい。プレッシャーもありますけど、それを力に変えていけるようにしたい。試合には準備したことしか出ないので、それを信じてやりたいです」
常に世界を見据えてきた。後に京都工学院高と名前が変わる伏見工業高校の主将時代から、20歳以下日本代表などの上位層のグループに選ばれていた。身長は当時で180センチオーバーと国内では小柄でもなかったが、「当たって(相手を)飛ばすプレーは、世界では通用しない(国内でも)選択しないようにしています」と冷静だった。鋭く駆け込んでスペースへパスを放ったり、相手防御の死角へ飛び出してボールを受け取ったりと、身体能力だけに頼らないプレーを常に意識してきた。
帝京大学では、司令塔のスタンドオフで1年時から主力になった。強気の走りを最大の看板としながら、ゴールキッカーとしても高い成功率をキープ。在学中には大学選手権8連覇も経験した。
代表デビューは、帝京大学4年生だった2016年6月12日、途中出場となったカナダ代表戦。続く6月18日の豊田スタジアムでのスコットランド代表戦では、故障者が出たのに伴い前半15分に緊急出場。代表戦2試合目だったが落ち着いてプレーし、さらに落ち着いた口ぶりで振り返った。
「周りに落ち着いていると評価してもらえたのはすごくいいことだと思うので、次はもっとさらに余裕があるなと言ってもらえるように、いいプレーをしていきたいです」
同年秋に始まったジェイミー・ジョセフヘッドコーチ体制の日本代表で、松田が存在感を発揮したのは翌2017年になってから。スタンドオフを主戦場としながら、インサイドセンター、フルバックでもスタンバイできる万能さが買われた。守っては危険地帯をカバーして鋭いタックルを放てるうえ、防御網を敷けば所属するパナソニックのロビー・ディーンズ監督曰く「スクエアに立って(相手と正対して)ディフェンスできる」。相手の穴を突ける一方、相手に穴を見せない。
「無理にいいプレーを、いいプレーをと考えてしまうと緊張する。できることをやろうとしています」
ずっと出たかったワールドカップの舞台でも、堂々と勝負を決められるか。
(文=向 風見也)
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