日本代表最大級のバズーカ砲

ヘル ウヴェ

文句なしの破壊力。タックラーと真正面からぶつかり、そのまま弾き飛ばしてぐんぐんと前進する。それを日本国内のゲームのみならず、国際リーグのスーパーラグビー、国代表が争うテストマッチでもやってのけてしまう。ヘル ウヴェは、国内有数の突破力を誇る29歳だ。

ワールドカップ日本大会を目指す日本代表では、ニュージーランドで広まるポッドという攻撃戦術を採用。選手が左右、中央にまんべんなく散り、相手防御網を引き伸ばしたり、しわ寄せさせたり。もしタッチライン際にスペースができれば、端側を任される強くて速い選手がボールを持ち快走。フランカーのリーチ マイケルにナンバーエイトのアマナキ・レレイ・マフィ、ウイングの福岡堅樹などがその任務を全うする。

一方で、もし防御が均等に並んでいたら、何らかの手段でその網目を切り裂くしかない。ショートパスやオフロードパスを多用するか、もしくは問答無用のパワフルランナーに思い切りよく突進させるか。身長193センチ、体重115キロのヘルは、そのうちやや強引なタスクの方を期待される。

普段はなるべく日本出身者と行動を共にし、流ちょうな日本語をさらに磨く。笑顔と野太い声でおなじみだ。旧名は「タウアテ・ヴァル・ウヴェ・ヘル」。幼少期に母国トンガでラグビーを始め、ニュージーランド・カンタベリー州のセントトーマス高を経て2010年に拓大入りした。攻守でハードワークする大型留学生として1年時から主力入りし、3年時には加盟する関東大学リーグ戦1部でシーズン最多の17トライを奪取。最終学年時には、同大史上初の外国人主将を任された。

2014年にヤマハへ加わると、同僚にいた元ニュージーランド代表ナンバーエイトのモセ・トゥイアリイから接点でのターンオーバーの極意を学習。2016年に日本国籍を取れば、国内トップリーグで外国人枠外での出場が叶ってアピール機会を増やす。その流れで、ジェイミー・ジョセフ現ヘッドコーチ率いる日本代表、さらにはサンウルブズへと誘われていった。

今大会出場に向けた最終選考合宿では、ボールを持っていない場面での動きの質にフォーカス。ボールのある場所ではパワーと技術を活かせるだけに、その機会を増やせるよう頭とスタミナを鍛える。

本番で戦うアイルランド代表とは2017年6月に対戦。主力不在の相手に2連敗と沈んだが、ヘルは堂々たる突破で観客の度肝を抜いている。再現を期待する声には、「もう、それは過去の事ね」と笑顔。あくまで未来を見据える。

（文＝向 風見也）

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