PLAYER'S HISTORY
日本代表選手ヒストリー
9月に27歳となる流大は、ラグビー日本代表のリーダー陣の1人。トレーニング中は好プレーをした味方を大声で褒めながら、取材時は「レフリーに相手の反則を取ってもらえない場合など、色々な状況を想定した練習をするのが大事」と話すなど、具体的な課題の提示も忘れない。
時にはジェイミー・ジョセフヘッドコーチへチーム作りに関して意見を申し立て、それでもなお、代表チームには選ばれ続けてきた。正直に、かつ慎重に人と関わる。
「お互いの努力を称えあうことは、リーダー陣としても率先してやっていきたいと思っています」
福岡県出身。9歳で地元のりんどうヤングラガーズでラグビーを始め、熊本の荒尾高校(現岱志高校)では徳井清明監督と日々ノートを交換。それをいまでも宝物とする。帝京大学では2014年度の主将として、大学選手権6連覇と日本選手権でのトップリーグ勢撃破を達成。ここでは岩出雅之監督とのやりとりから、選手と指導者の間を取り持つ中間管理職としての作法を知った。
選手同士で実施したミーティングの詳細を報告する時も、説明内容に矛盾点などがあれば「何を言っているのかわからん」と断じられた。自分の意見を世代や経験値の異なる大人へ正確に伝えるには、どんな話し方をすればいいのだろう……。指揮官から叱咤激励の意を込めたダメ出しを受けるたび、流は強みの交渉力を磨いたと言える。
「監督のところへ話をしに行く時は、その前に相当な時間を使って、準備をして、相当な覚悟を持って臨みます。その経験が、いまも活きています」
サントリーでも、入社2年目の2016年に主将に就任。当時の沢木敬介監督にこう認められたためだ。
「リーダーって、センス。センスのある人が経験を積んで、成長する。流は自分の意志を持ってトレーニングをしているし、周りに対してしっかり言うことを言っていた。リーダーのセンスが絶対にある」
日本代表でも、2017年4月22日のデビュー戦でいきなり主将を任された。2018年には、代表強化のためにできたサンウルブズの主将にも就任。沢木の論法で言う「センスのある人が経験を積んで、成長する」の道筋を歩んだ。
「まずはいち選手として勝負する。一方でリーダーとして、選手、スタッフとのコミュニケーションがうまくいくよう働きかけたいです」
身長166センチ、体重71キロという小柄なスクラムハーフ。攻めの起点をなす働き場にあって、相手の嫌がるプレーを瞬時に繰り出す。例えば、テンポよくパスを繋ぐなかで相手防御に間合いを詰められたと見れば、その背後に鋭いキックを放って陣地を獲得する。何より求められるのは、グラウンド内外で組織を前進させる言動。憧れだったワールドカップの舞台へ、いざ挑む。
(文=向 風見也)
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