PLAYER'S HISTORY
日本代表選手ヒストリー
8対8で組み合うスクラムというプレーでは最前列右の右プロップへ入り、腰を落とし、背中と地面を平行に保ち、隣のフッカーと脇を合わせ、後ろのロック、フランカー、ナンバーエイトの押し込みを背負ってじりじりと前に出る。公式記録で「身長184センチ、体重122キロ」の堂々とした体格。芝を離れれば穏やかな顔つき。
「韓国の友だちからも『頑張ってね』と言われます。日本でプレーしたいという気持ちです」
父の具春東は元韓国代表の左プロップで、三重のホンダにも在籍。息子には、母国より競技人気の高い国でプレーさせたかった。
そのため、後の代表選手は小学6年の頃、兄の智充とともにニュージーランドのウェリントンへ留学。中学3年時に来日し、大分の日本文理大付高校では全国高校ラグビー大会に不出場ながら17歳以下日本代表、高校日本代表に選ばれた。拓殖大学に進んでからは20歳以下日本代表のメンバー、さらには日本代表の練習生にもなり、当時スクラムコーチだった元フランス代表のマルク・ダルマゾに「母国へ連れて帰りたい」と言わしめた。
2016年には、国際リーグのスーパーラグビーに日本から挑むサンウルブズへ加入。同リーグ初の韓国人選手にもなった。この時は不慣れな左プロップも任され、一時怪我にも泣かされたが、2017年には右プロップ一本で起用されると、成長のきっかけを掴んだ。
日本代表とサンウルブズを兼務する長谷川慎スクラムコーチのもと、8人一体型となって相手と間合いを詰める組み方をマスター。同年秋から、ナショナルチームのレギュラー格となった。スクラム大国のジョージア代表、ラグビー発祥地のイングランド代表にも引けを取らなくなった。ちなみにイングランド代表と戦ったのは2018年11月。敵地トゥイッケナムスタジアムで、約8万人の観衆を目の当たりにした。
「夢のなかで試合をしているようでした。(スクラムは)最初は心配でしたけど組んでいくうちにいけるな、って」
今年7月上旬には右手を骨折し戦線離脱を余儀なくされた。同ポジションの仲間が国際試合で活躍するなか、復帰できたのは8月の最終候補直前合宿から。実戦練習のレギュラー組に戻るまでは、気が気ではなかった。
首脳陣からの評価は上々ながら、「もっと頑張らなきゃ、もっと魅せなきゃ、という気持ちです」。謙虚さを失わず、微調整に余念がない。本番でぶつかるアイルランド代表、スコットランド代表へも、いつも通りのプッシュを繰り出したい。
(文=向 風見也)
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