PLAYER'S HISTORY
日本代表選手ヒストリー
姫野和樹は、「運、いいと思いますよ!」と応じたことがある。よき出会いによって競技人生を発展させた経緯について聞かれると、自らの「引き」のよさに感謝したように言った。人の縁と自身のたゆまぬ努力を掛け合わせ、ラグビーワールドカップ日本大会への挑戦権を掴んだ。
「放課後は皆で野球しよう、サッカーしよう、鬼ごっこしよう、という感じで、くたくたになって家に帰る子どもでした」
幼少期から身体が大きく、持てあますエネルギーを発散できるのがラグビーだった。生まれ育った愛知県ではラグビー部のある中学が多く、姫野も御田中学校の部活動で楕円球と出会った。
高校日本代表入りした春日丘高校時代は「単純に、いまを楽しく生きる!……みたいな感じ」だったが、栄養管理と人間教育を重んじる帝京大学では社会人兼アスリートとして生きるための礎を構築。当時負った大けがを治す間に身体をパンプアップさせたこともあり、大学選手権8連覇を達成した頃には強くて優しいランナーと認知されていた。
地元で憧れの存在だったトヨタ自動車に入るや、かつて南アフリカ代表を率いたジェイク・ホワイト監督に主将を任された。ルーキーイヤーの船頭役には苦労が伴ったが、必死にプレーするうちに選ばれた日本代表でも早くからリーダー陣に入った。
ワールドカップイヤーの今年はリーチ マイケル主将とフィットネス競争で上位を争ったり、パワーとキレを兼備すべく管理栄養士の村野あずささんの助言に耳を傾けたりと、与えられた成長機会をフル活用している。身長187センチ、体重108キロでフォワードのロック、フランカー、ナンバーエイトに入り、突破力を長所とする。従来の日本代表では外国出身選手に任せてきたような働きを担うとあって、こうも笑う。
「日本人は弱いから、小さいからと言われますが、実際にやってみたらそんなことはない」
ピーター・ラブスカフニら海外出身者との定位置争いにも、「僕はライバルがいた方が伸びるタイプです。切磋琢磨してチーム力を上げたい」と己に言い聞かせるように言う。
「注目されることにはプレッシャーも感じますけど、基本的には凄く嬉しいです。スポットライトが当たっている方が楽しいタイプなのかなと思います」
運命に引き寄せられるよう、出世街道を駆け上がってきた。ゴールは、日本大会よりもさらに向こう側にありそうだ。可能性は広がる。
(文=向 風見也)
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