【南ア戦:レビュー】「本気」の南アフリカから受けた、手痛いレッスン/テストマッチ
2019.9.7(土)
9月6日、埼玉・熊谷ラグビー場。4年に1度のラグビーワールドカップ開幕を14日後に控えるなか、南アフリカ代表との大会前最後の実戦を7-41で落とした。
司令塔のスタンドオフを務めた田村優は、再確保を狙って蹴ったキックが相手にわたって失点を招いたり、チャンスで大外に振るパスの弾道が乱れたことでインターセプトからのトライを与えたりと、試合運びに難儀した。チームの修正点を問われれば、ずばり核心を突いた。
「細かいことです。ひとつのパス、ひとつのブレイクダウン(接点)、ひとつのランニングコース……。(日本代表は)大きくも速くもないですけど、細かいことにこだわればすごくいいアタックができる。ただ、そこを怠ると、デカい相手にパワーで負かされちゃう。……魔法はないです」
グラウンド中盤で大外に振れば効果的な攻めを繰り出せたが、その起点となるぶつかり合いでは南アフリカ代表のタックル、接点への絡みが際立った。特にナンバーエイトのデュアン・フェルミューレンは、前半18分ごろまで数分続いた自陣ゴール前での防御局面で何度も顔を出し、最後は自らのジャッカル(接点の球への絡みつき)で日本代表の反則を誘った。さらに南アフリカ代表は、ボールを持てば孤立する日本代表の後衛陣に向かって高いキックを何度も放り込む。
フランカーのリーチ マイケル主将はうなだれた。
「僕らがディフェンスでプレッシャーをかけられなかった。それで相手はどんどんキックを蹴ってきて、自分たちのウィングにプレッシャーをかけてきた。フィフティ・フィフティの(どちらに転がるかわからない)ボールを相手が多く獲ったという感じがありました」
そのキックを蹴ったのは、スタンドオフのハンドレ・ポラード、さらにはスクラムハーフのファン・デクラークだ。デクラークは蹴った意図とその成果について、こう話すのだった。
「日本代表がボールを回してくるチームであるのはわかっていて、そのためにもキック(とその再獲得)は重要だと考えていました。味方のバックスリー(ウイング、フルバック)はコンテスト(落下地点での球の獲り合い)を頑張ってくれて、我々を助けてくれました。チーム全体のワークレートのたまものです」
4年前のイングランド大会で、日本代表は過去優勝2回の南アフリカ代表に34-32で勝利。日本代表は当時より攻めのバリエーションや選手主体のチーム運営スキルなどで進化を遂げているものの、昨日の南アフリカ代表が一切の油断を排していたのも事実だった。大型選手を相手にしたスクラムやモール防御では確かな手ごたえを掴めた日本代表だったが、先述のキック合戦などで後手を踏んで好機のミスにも泣いた。
福岡堅樹、アマナキ・レレイ・マフィなど故障者が出たのも気がかり。それでもリーチは「強い相手とやってよかったです。改めて、世界の強さ、わかりました」と前を向く。まずは、混とん状態からスコアするスタイルを本番で実現すべく、各種プレーの「ディテール」を見直す。
チームは9月20日、東京・味の素スタジアムでロシア代表との大会初戦に臨む。
(文=向 風見也)
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