試合前から注目!インパクト抜群の「ハカ」
2019.9.12(木)
間もなく始まるラグビーワールドカップ日本大会。「ラグビーはルールが難しい」という声も聞かれるが、そんな人はぜひ、キックオフ前に注目してほしい。ラグビーが、ルールを把握せずとも迫力を体感できる競技であることがわかるはずだ。
キックオフ前に特に注目して欲しいのは、ニュージーランド代表、トンガ代表、フィジー代表、サモア代表の4カ国。それぞれ「ハカ」「シピタウ」「シヴァタヴァ」「シビ」という、それぞれの国に伝わる舞踊を披露する。なかでも大会3連覇を狙うオールブラックスことニュージーランド代表の「ハカ」はラグビーファン以外にも多く知られており、一見の価値がある。「ハカ」は同国に根ざすマオリ族の民族舞踊で、国技たるラグビーとも不可分な関係にある。同国のプロクラブや各種代表チームはそれぞれ独自の「ハカ」を持ち、学校ではさまざまな「ハカ」の意味や背景についての教育もなされる。
興味深いのは、ニュージーランド代表が披露する「ハカ」には2種類あり、どちらが披露されるかは当日までわからないということだ。最も多く見られるのは「カマテ」。歌いだしでは1名のリーダーと22名の選手が「カマテ! カマテ! カオラ! カオラ!」と、「私は死ぬ! 私は死ぬ! 私は生きる! 私は生きる!」を意味するシャウトを連呼する。
もうひとつの「カパオパンゴ」は、シャウトを重ねながらリーダーを除く22名が地面に跪き、リーダーが「オールブラックスをひとつにせよ」という意味の言葉を発声する形式。ニュージーランド代表のために作られた比較的新しいハカだ。
現役選手は試合ごとの格付けを明らかにしない意識もあってか、どちらを披露するかは当日のフィーリング次第だと強調する。もっとも大一番でお目見えするのは「カパオパンゴ」。今年8月の対オーストラリア代表2連戦では、10日の1試合目を落としたニュージーランド代表が17日の2試合目を「カパオパンゴ」で開戦。見事に完封勝利を挙げている。
9月21日、神奈川・横浜国際競技場。日本大会の予選プールBの初戦で、優勝争いの対抗馬とみられる南アフリカ代表とぶつかる。本来、同格とみられる国は予選で別なプールに分かれるものだが、組合せ抽選のあった2017年5月は南アフリカ代表が低迷していた時期だった。今度の合戦は、時間とくじのいたずらで生まれた好カードと言えよう。両チームともその後の戦いを首尾よく戦えば、決勝トーナメントのファイナルでも再戦する可能性がある。
大会序盤のビッグマッチ。果たしてニュージーランド代表は「カマテ」と「カパオパンゴ」のどちらを選ぶのか。その選択自体が、試合展開を暗示するかもしれない。
(文=向 風見也)
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