【ロシア戦:見どころ】緊張の開幕戦。「準備」を支えるふたつの視点
2019.9.19(木)
ラグビー日本代表は9月20日、東京スタジアムでワールドカップ日本大会の開幕戦に挑む。相手はロシア代表だ。プロップの稲垣啓太は、重圧下で力を発揮する術をこう語る。
「強がってプレッシャーを感じていませんと言うのではなく、プレッシャーがあると素直に受け止めるところから始める。そのプレッシャーをどう楽しむのか。それは、準備ですよね。入念な準備があって、初めてそのプレッシャーを跳ね返せる。それを跳ね返せた時に、それが楽しさに変わる」
ラグビーファン注目のオープニングゲームへの「準備」。その根っこには、ふたつの要素がある。ひとつは直近のゲームで得た反省。もうひとつは相手への敬意である。
開幕前最後の試合は9月6日、埼玉・熊谷ラグビー場で行われた強豪南アフリカ代表との一戦。スクラムやモールの防御など、相手が得意な勝負で一定の成果を示しながら、7-41で敗れた。スタンドオフのハンドレ・ポラードらに両コーナーへキックを蹴られ、処理に苦しむうちに陣地とボールを支配された。
小柄な日本代表は、本番でも似た戦法に出くわす可能性が高い。もっとも陣営は、その対策を練っているようでもある。詳細はシークレットだろうが、蹴り込まれた瞬間の日本代表の人の動きは注目の的となりそう。現首脳陣トップクラスの戦術家、トニー・ブラウンアタックコーチは断言する。
「ロシア代表のキックをレシーブするところについては色んなプランがある」
ロシア代表は、他国の資格失効につき繰り上げ出場となったラグビー発展途上国だが、日本代表が属する予選プールAには、アイルランド代表、スコットランド代表といった強豪国もいる。ただし2大会連続で日本代表主将となったフランカーのリーチ マイケルは、かねて「重要なのは初戦」としていた。なにせ4年前のイングランド大会の初戦では、過去大会通算1勝の自分たちが過去優勝2回の南アフリカ代表から大金星を挙げている。人の振り見て我が振り直せ、である。
「当時の南アフリカ代表の選手と喋ったら、『(日本代表戦前から)その先の試合について話していた』と。目標ももちろん立てていますけど、先を見ずに1試合、1試合やっていった方が、このチーム(日本代表)の強さが出ます」
そもそも昨年11月にロシア代表と直接対決した際には、日本代表は32―27と苦戦している。キック合戦と肉弾戦で後手を踏んだ印象で、背景には準備段階でのかすかな弛緩があった。リーチは「緩みはありました。会話を聞くなかで。1週間の準備の仕方をもっとしっかりとやら(見直さ)ないといけない」と反省する。
今回も玉砕覚悟で局地戦を仕掛けそうなロシア代表を見据え、大外と中央を繋ぐインサイドセンターの中村亮土はこう話す。
「全員が心地よいところでプレーできるサポート、コミュニケーションを、80分間を通してしていきたいです」
接点の周りに隙間があればその場のフォワードがどんどん縦に突進し、大外に空洞が見つかれば適切な声掛けと連係でそのエリアにパス、キックを放ちたい。ひとたびスペースに球を運べば、相手を後退させて勢いを生み出せる。相手を侮らずに各局面で先手を取り、、周囲の下馬評そのままの展開に持ち込みたい。
(文=向 風見也)
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