【スコットランド戦:見どころ】甘くない、それでも挑む。
2019.10.12(土)
ラグビーワールドカップ日本大会の予選プールは、いよいよ大詰め。これまで世界ランク2位だったアイルランド代表などから3連勝中の日本代表は、10月13日、神奈川・横浜国際総合競技場でスコットランド代表と最終戦を行う。台風19号の影響で実施可否は当日までわからないが、両軍陣営は実施されるのを前提に準備している。
予選プールの上位2チーム以内に入れば、8強による決勝トーナメントへ進める。現在勝ち点14と首位の日本代表は、勝てば文句なしでミッションクリア。ただし現在勝ち点10のスコットランド代表に負けるなどして勝ち点で並ばれた場合は、当該国同士の直接対決の結果により予選敗退となる可能性もある。決して予断の許されぬ状況下。今度の相手がタフであるため、さらにハードルは高まっている。
今大会のスコットランド代表は、尻上がりに調子を上げている。アイルランド代表との欧州6強同士の対戦で大敗も、以後は「切り替えた」とグレガー・タウンゼントヘッドコーチ。9月30日のサモア代表戦、10月9日のロシア代表戦と続けて完封勝利を収めたが、日本代表戦の4日前にあたるロシア代表戦では控え選手主体ながらワイド攻撃、孤立した相手を狙い撃ちするキック戦略といったお家芸を披露。組織全体のエネルギーを引き上げた。いい流れを作った。
加えて中心選手のうち数名は、サモア代表戦を終えてから事実上中12日で日本代表戦に備えている。心身の準備は万端だ。前回のイングランド大会でベストフィフティーンに輝いたスクラムハーフのグレイグ・レイドローはピンポイントで蹴り上げるハイパントを長所とし、フルバックのスチュアート・ホッグはスペースでの球のもらい方やカウンターアタック時の鋭いフットワークで際立つ。閃きのあるスタンドオフのフィン・ラッセルは言う。
「アイルランド代表戦を糧にしてきました。コンディションは整えています。今度はどちらにとってもアウェーゲームにはならない」
もちろん日本代表は、この難敵を歓迎する。負けてもボーナスポイントの獲得次第で予選通過は可能とされるが、ナンバーエイトの姫野和樹は「堂々と決勝トーナメントに食い込みたい。自分たちがやってきたことにフォーカスする」。もちろんこの「やってきたこと」には、台風一過となる当日の天候への対応、相手キーマンへの分析と対策も含まれるだろう。特にレイドローへは、リーダー陣の1人で左プロップの稲垣啓太がこう視線を向ける。
「戦術的な部分に関して深くはお伝えできないですが、レイドロー選手は間違いなくスコットランド代表の核になる選手。彼のキックの精度は高い。前回(2016年に2連戦)は、彼にペナルティーゴールだけで何点も重ねられた。ひとつキーを挙げるとしたら、ペナルティをしないことが鍵になる」
開幕戦以来ゲームキャプテンを任されるフランカーのリーチ マイケルは、「ティア1(強豪国)に勝つには鬼にならなければいけない。勇気を持つことが重要。ゴールが近くなるほど怖がる人も、プレッシャーに向かってびびる人もいる。ビビらず、怖がらず、プレッシャーに対して準備をすることが大事」。相手が甘くないことを認識したうえで、自信を持って勝ちに行く。日本ラグビー界を新たな地平へ連れてゆきたい。
(文=向 風見也)
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。