いまの盛り上がりには「怖さ」も?日本ラグビーの課題とは
2019.10.17(木)
ラグビーのワールドカップ日本大会で決勝トーナメントに進んだ日本代表は、目下、都内で調整中。トレーニングを視察した森重隆・日本ラグビー協会会長が記者団に囲まれたのは、10月15日のことだった。
昨今のラグビー人気の高まりを受け、ぽつりと漏らしたのは「怖いよ」という言葉だった。
確かに2015年のイングランド大会時も日本代表の活躍によってブームが巻き起こったが、それが文化に昇華されることはなかったと言える。大会閉幕後の国内トップリーグにおいては、「前売り券完売」と銘打たれたゲームの会場で空席が目立つことがあった。バックヤードでの失策があったのは明らかだった。
国際リーグのスーパーラグビーへの日本チーム参戦などで、競技レベルは当時以上。裏を返せば、安定的な認知度や知名度は選手たちの実力と別な領域で作られるのが明白となった。ちなみにサンウルブズと呼ばれる同クラブがスーパーラグビーに挑めるのは2020年までで、次なる強化策についてはオープンにされていない。
今年6月就任の森会長の下では、国際派の岩淵健輔氏が専務理事を務める。「この2年で日本ラグビーの将来が決まる」と、大会前から気を引き締めている。
今季の国内トップリーグは1月と2月からのスーパーラグビーと日程が重なる。ファンへの訴求力をどう維持するかについて、岩淵氏は理事会内での議論の一端を明かした。
「いま日本代表を応援していただいている皆さんのなかには、それまでラグビーを見てこられなかった方もいて、それぞれの選手がどのチームでやっているかもご存じではないと思う。それらをより丁寧に伝えてゆく必要があります」
森会長が「怖い」と漏らしたのと同じ日に、現日本代表の茂野海人は「この盛り上がりをどう捉えるか」と聞かれこう即答した。
「すごくありがたいことだと思います。ただ、今後この人気をどう継続させていくかが一番の課題だと思います。日本ラグビー全体で考えていけたら」
前回のブーム時は代表デビュー前だった選手も、ここ数年の敬意を踏まえてかすかに危機感を抱いているのだ。
日本ラグビー界は、現在の盛り上がりを「怖い」と捉えられる位置にたどり着いたということだ。
(文=向 風見也)
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