ワールドカップはまだ終わってない!
2019.10.25(金)
ジャパンロス、という言葉があるようだ。ラグビーワールドカップで初の決勝トーナメント進出を果たした日本代表が準々決勝で涙をのみ、翌日には解散。選手たちがテレビの情報番組をはしごするなか、ある日本代表OBは首をひねった。
「もう、世間では『ラグビー、終わったね』みたいになっているでしょう。ワールドカップはまだ、あるんだけど…」
その通り。4年に1度のラグビーの祭典は準決勝と3位決定戦と決勝を残している。もしも今大会開催中にラグビーという競技に関心を持ったなら、世界4強の優勝をかけたバトルを味わって欲しい。
まず近づくのは、準決勝第1試合。10月26日の神奈川・横浜国際総合競技場で、3連覇を狙うニュージーランド代表がイングランド代表とぶつかる。
ラグビー発祥の地とされるイングランド代表は、自国開催だった前回大会は予選プール敗退。今回は初の外国人指揮官であるエディー・ジョーンズヘッドコーチが自身4度目となるワールドカップで着実に白星を積む。前回は日本代表を率いて歴史的3勝を挙げた名物コーチは、「この試合がいつかやって来るとわかっていた。(長らく)戦術的な部分に取り組んできた。自信はある」と意気込む。
記者会見では「練習場に人がいる」といった旨の発言で、メディアの過剰反応を促す。「エディーはニュージーランド代表からスパイが来ていると話しているが」という質問へ、ニュージーランド代表のスティーブ・ハンセンヘッドコーチは、「それは我々のカメラだとは言っていないでしょ」と冷静に対処。場外バトルも世界的関心を集める。
オン・ザ・フィールドでの焦点は、ニュージーラード代表の即興的な攻めとイングランド代表の組織防御とのつばぜり合いだろう。ニュージーランド代表は、タフなプレッシャーのもとでもプレッシャーのかからない場所を見つけたり、作り出したりして攻めるのが得意。その傾向を踏まえてか、ジョーンズはこうも言い切る。
「ニュージーランド代表は常に速く、プレーの順序を変えてくる。試合序盤でそれを理解しなければいけない」
準決勝は翌日にも横浜である。ここに出てくるのは、日本代表を破った南アフリカ代表だ。
欧州6強の一角であるウェールズ代表に対し、スクラムハーフとして攻守で日本代表を苦しめたファフ・デクラークは、「相手の分析も十分。強みと弱みを把握しています。タフな試合になると予想していますが、キック合戦になるのでは。相手のミスを誘ってトライを獲る試合にしたい」。この競技での重要項目のうち陣地の取り合いにフォーカスし、タフな防御を貫きたいとする。
メンバー中身長2メートル超が4人と大きな選手を揃える南アフリカ代表は、伝統的にパワフルさを強みとしながら近年は小柄な選手も活躍。身長172センチのデクラークは好判断とキックが光り、ウイングのチェスリン・コルビは身長170センチながら空中戦とランで持ち前のばねと俊敏性を発揮。異なる個性が各々の役割を果たす、まさにラグビーのチームといった多様性あるグループに映る。
ラグビー開始の祖が王者に挑む土曜日。開催国を倒した個性的かつパワフルな大国が欧州の実力者とぶつかる日曜日。日本代表の戦いが終わっても、まだまだ日本国民はラグビーワールドカップを楽しめる。
(文=向 風見也)
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