堀江翔太 インタビュー前編
等身大の想い 日本開催の2019年W杯は「お祭りみたいに」
2018.9.20(木)
ラグビーワールドカップ日本大会が来年9月、開幕する。現役日本代表の主軸の一人、堀江翔太は、「お祭りみたいな試合をしたい」と大らかに語る。
大阪育ちの32歳。競技の面白みのほぼすべてを表現できる選手だ。スクラム最前列中央のフッカーという黒子のようなポジションを務めながら、意表を突くパスやキック、相手防御のひずみをえぐるランと華美なプレーで光る。肉弾戦にも強い。
「先を見過ぎない」と日々を大切に過ごす。もっとも出場すれば3大会連続となるワールドカップにも、鋭い視線を向ける。今回は南アフリカ代表などを破った2015年のブーム、個性を重んじるスタンス、現代表での歩みなどを語る。
(インタビュー・構成=向風見也、撮影=長尾亜紀)
大きな変化をもたらした、あのワールドカップ
――堀江さんが日本代表の副キャプテンとして臨んだ2015年のイングランド大会では、予選プール突破こそならなかったものの歴史的な3勝を挙げました。帰国後、周囲の環境にかなり変化があったのではないでしょうか。
「めちゃくちゃありました。結果を残すか残さないかでこんなに違うか、というくらい違いがありましたよね。2011年(ニュージーランド大会は未勝利)は日本に帰ってもあまりメディアとかに映らなかったですけど、2015年の後はラグビー選手がアスリートとしてテレビに出ることが多くなったと思います」
――戦い終えて成田空港に着くや、多くの出迎えのファンと帰国会見が用意されていました。
「そんなことも、全く考えてなかったですしね。向こうでも日本のテレビは見られたんですけど、それも一時、騒がれているだけかなというくらい。あんな人気になっているとは思っていなかったです」
――そのブームが続いていた2016年は、国際リーグのスーパーラグビーに日本のサンウルブズが参戦。そのできたてのチームでキャプテンになったのが堀江選手でした。サンウルブズとリンクする日本代表でも、ヘッドコーチが決まらないなか船頭役となりましたね。
「大変な年でした。その後にあったトップリーグ(パナソニック ワイルドナイツの一員として臨んだ国内リーグ)も難しいところがありましたし、メンタルって大切やな、と思わされました。特にサンウルブズでは負けている時が多くて、チームを勝たすために選手にどう発言していったらいいのかずっと気を使っていた。気疲れというか、精神的にきつい部分がありましたね。僕のバランス的には、まず自分のことを中心に考えて、そのうえでチームを考えた方がうまく回ると思いました。チームのことを考え過ぎて自分のプレーができなくなっていたのは確かだったので」
――ジェイミー・ジョセフ現ヘッドコーチが就任した2016年秋以降も、しばらくキャプテンを務めます。これは本筋とはやや無関係ですが、当時、堀江選手のユニークな髪型が日本協会の理事会で議論になったという記事が『Yahoo!ニュース』のトップで扱われました。
「あぁ、ありましたねぇ。あれは僕が直接耳にしたわけでもないですし、関係者から『そんな話があるらしいよ』と聞いた時も冗談で言われていると思ったので、特に気にしてなかったです。言いたいこともわかりますけど……。まぁ、すんません、という感じです」
――堀江さんには、ご自身の意思と同時に周りの人の意思も尊重されるところがあります。
「あぁ、それ、あるかもしれないです。年下、年上関係なしに誰にでも意見があるから、それぞれのいいところを取る。個性を大切にしたいと思っています。僕って上下(関係)がフラットだと思われているのかもしれないですけど、僕のなかでの上下はあるんですよ。敬語を使うとか、挨拶をするとかいう上下は必要。敬語でも『これって●●じゃないですか?』みたいに言えるじゃないですか。ただその上下が『下が意見を言いにくい』となるのはよくなくて。意見の交換という意味では、フラットがいいですよね。僕は社会人をしていないのでこれが正しいのかどうかはわからないですけど、スタンスはこうです。で、若いやつと喋っていても、自然体でいる感じです」
堀江翔太(ほりえ・しょうた)
ポジション:HO/フッカー
1986年1月21日生まれ、大阪府出身。現所属は、パナソニック ワイルドナイツ(トップリーグ)、および、サンウルブズ(スーパーラグビー)。2013年、2014年に所属したスーパーラグビーのレベルズ(オーストラリア)でプレーし、副キャプテンとして臨んだ2015年ラグビーワールドカップで活躍した実績から、ワールドクラスの評価を得る。2016年にはサンウルブズの初代キャプテンを任される。日本代表キャップは58(2018年6月時点)。
掲載情報の著作権は提供元企業等に帰属します。