堀江翔太 インタビュー後編
2015年に達成できなかったベスト8入りを決めたい
2018.10.4(木)
強いチームは、全員が同じ方向を見ている
――あらためて、2012年以降の選手生活を振り返っていただきます。2011年のニュージーランド大会敗退後、海外に挑戦されました。2012年からニュージーランドのオタゴ州に留学。翌年にはスーパーラグビーのレベルズ(オーストラリア)とサインします。
「2011年に結果が出ないなか、代表の重要性を知りました。開催地では地元のニュージーランド代表が優勝してすごいことになっているのに、日本では取材の人が数名とカメラ1台みたいな。まず、ラグビーがあるのだと日本で知らせるのに選手ができることは、強化しか思いつかなかった。それで、海外に出なあかんと決意したんですよね。オタゴでは近場(肉弾戦周辺)で仕事をするような、海外で求められるフッカーの動きを映像で見ながら勉強しました。レベルズではセットプレー(スクラムなど)を学んできたという感じです」
――日本代表では、国内外で実績のあるエディー・ジョーンズさんがヘッドコーチに就任。早朝に始まる1日複数回の練習で選手を鍛えるなど、献身を求めていました。
「厳しい人でしたよ。1人であそこまでできるなんてすごくエネルギーがあるだろうし、神経をすり減らすようなことをやっているなと思いました。実際、身体、壊しましたしね(2013年、軽度の脳梗塞で倒れた)。オフフィールドでもスタイル(服装)をちゃんとさせるとか、早朝練習をさせるとか、他の監督ではなかなかできないですよ。人に厳しくするって、しんどいので」
――結局、ワールドカップで結果を残しました。それゆえ当時の過酷な準備期間は、やや過剰に美化されてしまうのですが。
「全員が同じ方向を見ているのが強いチームなんですよ。で、あのやり方が一番そうさせやすいかな、とも思います。ただあれは、あくまでやり方の一つとして思ってほしいですね。エディーさんがいなくなった後、『また多くの練習が必要であれば(自分たちで)するだろうな』ということはリーチ(マイケル、現日本代表キャプテン)と話していましたけど、まずは新しい監督の方針を100%忠実にやろうと思っていましたね」
ラグビーを知らない人にも気軽に見てもらいたい
――ジョセフさんがヘッドコーチになったのは2016年秋。2018年はそのジョセフさんがサンウルブズの指揮を兼ねましたね。
「僕のなかでは忠実にやろうとしていることが、ジェイミーに『やり方が違う』と怒られるような時がありました。他のスタッフに聞いたら、本当は当時していた新しい戦術に対しても『なじみきっていなくても、頑張ってくれている』くらいには評価されていたみたいなんです。でも、僕にはそう思ってもらえていることが伝わっていなくて、『全然、あかん』くらいに捉えられていると感じていました。本当、ささいなことなんですけどね」
――ジョセフさんには、あえて辛辣な物言いで選手を発奮させるところがあります。
「でも、藤井さんがジェイミーと選手の間を取り持ってくれて、関係がだんだん良くなっていったと思います」
――藤井雄一郎さんは、かつてジョセフさんがプレーしていたサニックス(現・宗像サニックス)の現監督。2018年からはサンウルブズにも入閣し、特にグラウンド外で重要な役割を担っています。
「藤井さんとジェイミーとの繋がりは長くて、藤井さんの言うことをジェイミーが聞いてくれるということもありました。藤井さんと選手との間の距離も縮まっていって、選手が藤井さんに何かを伝えるということもあります。今年のサンウルブズのニュージーランド遠征の時(4月)にちょうどそういった(歩み寄りの)話が持ち上がって、日本に帰ってきてから皆で飯に行って……。そのあたりから、ぐっと強くなりましたよね」
――陰のキーマンの計らいも奏功したのでしょうか、当時、開幕9連敗を喫していたサンウルブズは、5月に2連勝。日本代表も6月のツアーで2勝1敗と勝ち越しました。ここから来年のワールドカップに向け、どう過ごしていきたいですか。
「ベースの戦術、戦略を理解して、フィジカル、スクラムなど、上げられる精度は最後まで上げていきたいです。ワールドカップでは、観客の人が盛り上がるお祭りみたいな試合をしたいですし、2015年に達成できなかったベスト8入りを決めたい。これから観る方には、ルールがたくさんある格闘技のような感じで気楽に見てほしいです。選手もなるべくファンサービスしようとしているので、それも楽しんでもらえればと思います」
――その言葉通り、現在行われているトップリーグでは堀江さんたち人気選手がいやな顔ひとつせずサインや写真撮影に応じています。頭が下がります。
「全然、人気なかった頃も知っているので……。そら、なかには失礼な方もいるかもしれないですけど、その方も含めてファンなので!」
堀江翔太(ほりえ・しょうた)
ポジション:HO/フッカー
1986年1月21日生まれ、大阪府出身。現所属は、パナソニック ワイルドナイツ(トップリーグ)、および、サンウルブズ(スーパーラグビー)。2013年、2014年に所属したスーパーラグビーのレベルズ(オーストラリア)でプレーし、副キャプテンとして臨んだ2015年ラグビーワールドカップで活躍した実績から、ワールドクラスの評価を得る。2016年にはサンウルブズの初代キャプテンを任される。日本代表キャップは58(2018年6月時点)。
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