山田章仁 インタビュー後編
2019年はいままでのラグビー人生の集大成
2018.11.2(金)
「自分だけの三角形をつくる」とは?
――ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ率いる日本代表では、スピード感が求められます。山田章仁選手はそれにフィットすべく一時体重を絞っていました。いまはいかがですか。
「すごく痩せている時よりかは、ちょっと体重も増えてきたかなと思う。でもバランス、自分のコンディションとかを見ながら、徐々に自分のベストを(探っている)。これは(サイズが)大きい、小さいではなく、言葉では表せないですね。……それを言葉で表すのがインタビューだろ、ってなるんですけど。……まぁ、バランスの取れたラグビー選手になりたいなと」
――山田選手が以前強調していた考えに「きれいな二等辺三角形より、自分だけの三角形をつくる」があります。「スピード重視」「パワー重視」と見立てた下辺の両端と、「下辺の上で、自分がどの地点に位置するかを示す点から垂線を引いた先の点」とを結んだ「三角形」に独自性を持たせたいという意味のようです。他の誰でもない領域を見つけられたら、どんな相手に対しても一定の優位性を示せるというイメージが浮かびます。
「そうですね、自分なりの三角形を目指す。その三角形は、時代にも、相手にも、チームの戦術にも合わせたものにしなきゃいけない。いまは社会自体がそんな時代に来ているとも思っています。社会の波に合わせるようなラグビー選手になっていきたいですね」
――「時代」は2019年のワールドカップ日本大会、「相手」はアイルランド代表など同大会の予選プールでぶつかる相手、「チームの戦術」はジョセフの唱えるスタイル、と見ることができそうですね。
「とはいっても、勝負するのは1対1。例えばアイルランド代表と大くくりに見るんじゃなくて――まだメンバーが誰になるのかはわかりませんけど――あのなかにもパワー系の選手、スピード系の選手がいたりと自分なりの三角形を持つ選手がそろっていて、それらに勝てる三角形にならないといけない。いまの日本代表には、それができる環境が整っていると思います。選手の日当もちょっと増えてるし! ……あとはワールドカップまであと1年を切って、取り扱ってくださるメディアも多い。選手のモチベーションも高まっているなと感じます」>
2019年はいままでのラグビー人生の集大成
――今年9月、候補選手が和歌山に集まって数多くのミーティングをこなしました。
「はやりのグループワークです。トップダウンでは限界があるんじゃないかというのがいまの時代の流れ。ラグビーには時代を引っ張っているところがあって、いろんな人種の人が同じ国の代表で戦うんです。これは日本のような島国ではとても大事なことで、それで結果を残せば皆も感動、賛同してくれる。だから本当に大事なのは、ラグビーで結果を出すことなんだよ、と」
――チームづくりに携わると同時に、大会登録メンバーに入るための努力も続けます。
「引き続き首脳陣には自分の強みをアピールします。プレーでも、話し合いでも、すべてにおいて。いままでのラグビー人生の集大成なので。集大成って言うと『最後なんですか』って勘違いされるんですが、『そこ(開催年)までの集大成』ってこと。2015年もそれまでの集大成ですし、2019年はこれまでの集大成。もちろん2023年も出るのであれば、そこも集大成。ワールドカップは、発表会というか、いままで練習してきたことをしっかり出すステージにしたいという思いではいます」
――日本代表として戦う時の気持ちは、どんなものですか。プレッシャーなのか、楽しみなのか。
「プレッシャーって、自分のしてきた以上のことをしようとするから感じると思うんです。テストでいえば、80点しか取れないのに100点を取ろうとすると、緊張する。テスト勉強の時に『あ、教科書2ページ分やれていないな』となったら、(100点満点のテストを)90点満点だと思わないと。僕は緊張、プレッシャーとかはあまり感じない方ですね。となると、いままでやってきたものをどれだけ出せるかという楽しみ、やってきたことに自信があって早く皆に見てもらいたい(という気持ちが強い)。『テストに出るか出ないかわからない単語帳の端の単語を俺は勉強した! ここ出てくれ! 出た!』みたいな気持ちの持ちようでございます!」
山田章仁(やまだ・あきひと)
ポジション:WTB/ウイング
1985年7月26日生まれ、福岡県出身。現所属は、パナソニック ワイルドナイツ(トップリーグ)、および、サンウルブズ(スーパーラグビー)。50mを5秒台で走る快速、強靭な足腰、クレバーなプレーで高い評価を得る。2015年ラグビーワールドカップの予選リーグ第3戦サモア戦でトライを決める。日本代表キャップは24(2018年6月時点)。
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