ラグビーW杯2019

INTERVIEW

インタビュー

大畑 大介インタビュー前編

日本が世界に誇るトライ王が語る、子どもと生きる全ての人に、W杯に触れてほしい

2018.11.28(水)

子どもの頃は人見知りだったが、大人になればちびっ子たちのヒーローになった。

小学校3年生の頃にラグビーと出会った大畑大介は、走って、走って、走りまくり、2006年には日本代表のエースとしてテストマッチ(代表戦)のトライ世界最多記録を更新。通算69まで伸ばしたそのレコードは、いまだ破られていない。

さまざまな競技の有名アスリートが運動能力を競い合う番組に出れば、持ち前の身体能力を活かして優勝をさらう。バラエティー番組でも軽妙なトークを披露。名実ともに、日本ラグビー史を代表する存在となった。

過去に2度出場のワールドカップが日本で開催されるまであと1年を切った今、現役時代の秘話とラグビーとの教育、子育てとの関連性を語った。子どもと生きる全ての人に、ワールドカップに触れてほしい。

(インタビュー・構成=向風見也、撮影=長尾亜紀)

ラグビーはどんなにすごいプレーヤーでもひとりではできない

――小学校3年生の頃にラグビーを始めた大畑さん。快足を長所に名をあげ、やがて日本代表選手となります。

「もともと人となじめない性格で、どうやったら友達ができるかと考えた時、『周りに対して自分がベクトルを向けられないのならば、周りから自分にベクトルを向けてもらえる人間になろう!』と思いました。そんななかラグビーに出会って、実際にやってみたら、ただただ足が速かっただけで皆が僕のことに興味を持ってくれた。自分の居場所が見つかったのが、その瞬間だったんですよね。ラグビープレーヤーとして成長していくことで、その居場所をさらに大きくしていきたくなりました」

――身体をぶつけ合う。ルール上、ボールを前に投げられないなか、ボールを前に運ぶ。そんな特性を持つラグビーを通じ、学んだことはありましたか。

「自分を認めてもらうために自己主張をすることで、“ラグビーボール”という責任が自分に回ってくる。その責任を背負ってどれだけの仕事をするかによって、チーム内の信頼感が変わってくることがわかりました。またラグビーは、どんなにすごいプレーヤーであってもひとりではできない。本当の意味で隣同士の人間と信頼関係が築けていないと、自分のところにボールは回ってきません。逆に、自分が隣の人間を信用していないと、目の前の状況を自分自身で処理しようとする。これは社会でも一緒。組織の一員として認めてもらうには、まず自分自身の仕事を全うして責任を果たさなくてはいけないと感じました」

――「自己主張」「責任」「信頼」への思いは、2001年以降、言葉の通じないオーストラリアやフランスでプレーしたなかでさらに強くなったようです。

「日本にいる時は、自分に与えられた役割のなかである程度のパフォーマンスをして認められていた部分がありました。自分自身をさらに成長させたいという思いで、海外に行きました。それまでの実績がゼロになったなか、日本で与えられていたいろいろなものを、海外では自分で手に入れなくてはいけませんでした。

僕はウイングという端っこのポジションにいるので、周りからボールを託されないと仕事ができない。そのためチームメイトからの信頼を得てボールを託されるためには、ボールを持っていない時にどれだけの仕事をするのかが大事でした。ボールを持っていないところでチームを思って仕事をするようになって、その一試合、そのワンプレーに意識を高く持つようになりました。そうすることで、それまでにあったプレーのむらがなくなりました」

――相手をタックルで倒す。味方が蹴ったボールを追いかける……。ウイングの選手ができる「ボールを持っていない時の仕事」に意識を傾けたのですね。

「それと、自分が日本人であるということも海外に出ることで強く感じられました。海外の選手にとっては、日本人を測る物差しは大畑大介しかいなかった。自分が頑張らないと日本の評価も上がらないと意識しました。契約上、なかなか試合に出られないこともあり、いま振り返ればしんどかったんだろうなとは思います。ただ当時は、自分のなかでいろいろなことを経験したいと考えていた。うまくいかないこともマイナスに捉えませんでした」

子育てから学んだ、人との接し方

――ところで大畑さんは現在、2人のお嬢様の父親です。競技生活で得た財産で、子育てに役立ったことはありましたか。

「というよりも、子どもが産まれたことで、その頃のチーム内での自分と周りの関わりが変わりました(当時は神戸製鋼コベルコスティーラーズに所属)。長女が生まれたのは2004年。アスリートとしてある程度のことができている状態で、若い選手に対して『何でそんなこともできないの?』と減点法で見てしまっていた。彼らにすれば、そんなことを言われても急にできるようにはならない。どうしても委縮するんです。

©Getty Images

でも、子どもに対しては、寝返り、ハイハイと、できなかったことができるようになったことをただただ褒めてあげられたんです。そして、子どもも褒められるとうれしくなってさらにいろんなことにチャレンジする。その経験のおかげで、『後輩に対しても、できることを褒めるようにした方がいいんじゃないか』と思えるようになったんです。結果、後輩との距離感は縮まりました。それまでの僕は一匹狼で、誰ともつるむこともなかったのですが、子どもが産まれて本当に変わりましたよ。人からもそう言われますし、後輩からの話しかけられ方も明らかに違っていきました」

<後編へ続く>

PROFILE

大畑 大介(おおはた・だいすけ)

1975年11月11日生まれ、大阪府出身。現役時代には、神戸製鋼コベルコスティーラーズ、ノーザンサバーブス(豪)、モンフェラン(仏)でプレー。ワールドカップに2度出場(1999年、2003年)。日本代表キャップ58。日本ラグビー界が世界に誇るトライ王。2011年に引退後、メディア・講演等で精力的に活動。日本人史上2人目となるワールドラグビー殿堂入り。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会アスリート委員会委員、ラグビーワールドカップ2019アンバサダーを務める。

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