姫野和樹 インタビュー後編
初めて挑むW杯に臆すことない強さ 「期待されるのは好き、応えたい」
2019.1.7(月)
(インタビュー・構成=向風見也、撮影=長尾亜紀)
日本代表は強くなっている、W杯では大きな可能性がある
――さて、ワールドカップに向けて。今の日本代表というチームをどう見ていますか。
「可能性はありますよね。力もついてきているし、強くなっている。あとは、本当に強い相手にどれだけ自信を持って臨めるかだと思います。一人ひとりが強い自信を持って、それをチームとしての大きな自信にして臨むことができれば、大きな可能性があると思います」
――その「自信」はどうつくりますか。
「いろいろな経験を通してです。僕は今年サンウルブズに入って、日本人選手でもスーパーラグビーで戦えると感じました。まずは、そういう経験から一人ひとりが自信をつける。それがチームの大きな自信になりますし、それによって日本代表が(大会前の代表戦などで)結果を出せれば、さらに自信をつけられる」
――2018年秋のツアーではニュージーランド代表、イングランド代表に敗戦。どんな印象でしたか。
「僕自身、(国内の)トップリーグで負ったけがから戻ったばかりでした。だから、あまり確固たる自信はできていなかったと感じます。自分のパフォーマンスに関しては、全く納得はしていないです。自分の一番いいメンタル、身体の状態ではなかったし、試合勘もなかったなかでの復帰だったので。ただオフを挟んでしっかりトレーニングをすれば、またいい働きができると思う。今は身体の状態もよくなりましたし、しっかり心のリフレッシュができたらと思います」
――「心のリフレッシュ」。12月中旬までのトップリーグを終えると、代表候補選手が始動するまでに約6週間のオフがあります。
「ここ数年、プレッシャーがかかる気の抜けないなかで生活していた。オフがあってもその次の試合、シーズンがあるためになかなか気の休まる場所がなくて……。ただ、今は少し落ち着いて休めると思います。2月の始動に向けたオフは、すごく大事なものになると思います。この時しかゆっくりできないので、とりあえずラグビーから離れたいですね。ただただ自分の時間を過ごしたい。自分と向き合いたいです。ラグビーは楽しいからやっていますけど、自分の心に余裕がないとラグビーを楽しめないと思うんです。ですので、一回リセットして、心の余裕をつくりたいと思います」
ボールを持ったときにどれだけ前に進めるかを見てほしい
――オフおよびその後の準備期間を経て、重圧のかかる自国開催のワールドカップへ。いかがですか。
「ワールドカップはすごい場所。皆、口をそろえて言いますよね。リーチさん(リーチ・マイケル キャプテン)も、フミさん(田中史朗)も(いずれも2大会連続出場中)。僕は全くその舞台には立っていないですし、話に聞いているだけですけど、会場の雰囲気はすごいものになって、プレッシャーも相当なものになるだろうとは思っています。ただ自分にも、これまでにいろいろと経験したことがあります。(イングランド代表戦では)トゥイッケナムスタジアムで8万人を前にプレーしましたし、ニュージーランド代表戦では相手が踊るハカも間近で体感した。いろんなことをしてきたんだという経験を自信に変えて、ワールドカップの舞台でも臆せずにプレーしたいです」
――大会が間近に迫れば、姫野選手と同じポジションに代表資格を得た海外出身選手も加わる可能性があります。
「プラスですよね。僕はライバルがいた方が伸びるタイプですし、強いチームにいた方がパフォーマンスを上げられる体質、気質です。切磋琢磨していって、チームの力を大きくしたいです。2019年は、チャレンジしたいですね。自分の思う身体づくり、自分が得たいスキル、メンタル……。全てに対してチャレンジしたい」
――すっかり、注目選手の一人になっています。そのことはどう捉えていますか。
「注目される分プレッシャーもあると感じますけど、基本的にはすごくうれしいですし、楽しいですね。僕は期待されるのが嫌いじゃないというか、好きなので。その期待に応えるために努力したいと思いますし、スポットライトが当たっている方が楽しいタイプなのかなと思います」
――ワールドカップはどんな大会にしたいですか。また、自分のどんなプレーを見てほしいですか。
「たくさんの人にラグビーを知ってもらいたいですし、このスポーツを日本に根付かせたい。そのきっかけがワールドカップだと思っていますし、そうできるかどうかには日本代表が活躍できるかとも関係してくる。だから僕は、グラウンドで120%の力を出すことにフォーカスしたいと思っています。見てほしいプレーはボールキャリー。ボールを持ったら相手のディフェンスラインを突破して、必ずゲインをする選手だと思っているので、そこを見てほしい。僕がボールを持ったときにどれだけ前に進めるかを見てほしいと思います!」
――もう、本番の大舞台で戦うイメージはございますか。
「イメージ、できています。はい。もう、頭の中では10回ぐらい予選プールを戦っていますもん。日本代表はいつも、グループリーグを突破しています!」
――ちなみに、どうやって。
「それは、まぁ、楽しみにしてください!」
姫野和樹(ひめの・かずき)
ポジション:フランカー/ロック/NO8(ナンバーエイト)
1994年7月27日生まれ、愛知県出身。現所属は、トヨタ自動車ヴェルブリッツ(トップリーグ)、および、サンウルブズ(スーパーラグビー)。今秋のツアーでは3つのポジションで先発を果たすなど、この1年で急激に日本代表での存在感を放っている期待の若きホープ。ハードなランでチームを引っ張る。日本代表キャップは9(2018年11月時点)。
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