ロビー・ディーンズ インタビュー前編
「日本にはトップ10を狙うだけの力が備わっている」世界を知る名将が見た日本ラグビー
2019.8.5(月)
オールブラックス(ニュージーランド代表)ではアシスタントコーチ、ワラビーズ(オーストラリア代表)では監督として2度のワールドカップを経験、世界最高峰リーグ、スーパーラグビーではクルセイダーズの監督として5度の優勝を誇るロビー・ディーンズ。2014年からトップリーグのパナソニック ワイルドナイツで指揮を執り、これまで2度のリーグ制覇を成し遂げている世界的な名将が、日本ラグビーの現在地、間近に迫ったワールドカップ、さらにはラグビーの持つ「魅力」を存分に語ってくれた。
(インタビュー・構成=花田雪、撮影=山下令)
世界を知る名将が感じる日本のラグビー
――世界のトップレベルで指揮を執り続けたロビーさんが、日本のクラブを率いることになったキッカケを教えてください。
「ワイルドナイツの監督に就任したのは2014年ですが、実はそれよりもかなり前、2005年ころからチームとの関係がありました。幸運なことに私はそれまでオールブラックスとワラビーズという2つのナショナルチーム、クルセイダーズというクラブチームを指導する経験を頂いていましたが、ワラビーズの監督を退任した後、『力を貸してほしい』と連絡をもらったんです。私自身にとっても新しい挑戦であるとともに素晴らしい機会だと思ったので、日本で指揮を執ることを決断しました」
――日本のラグビーの特徴は?
「来日前から感じていたのは、『速いラグビー』『ボールを前に、前に展開するラグビー』に強みを持っているということ。ただ、今ではそれに加えて世界でも戦えるフィジカルが備わってきたなと感じています」
――日本のラグビーが進化している理由はどこにあるのでしょう。
「一番は、高校、大学、クラブという流れが確立されているところでしょう。ニュージーランドでは高校から直接クラブに入団するケースが多いので、その違いは大きいと思います。その上で今は大学の時点でしっかりとしたフィジカルトレーニングを積んで、クラブに入団してもすぐに順応できるレベルになっています。今、日本のワールドランキングは11位ですが(※7/26取材時点)、これから世界のトップ10以内を狙うためには絶対に必要な部分ですし、それができるだけの力は備わっていると思います。現代のラグビーはテクノロジーの進化によってチーム分析、ゲーム分析が細かくされ、『何かが突出している』だけでは勝てない。すべてにおいてレベルアップが必要な時代の中で、日本もそれができていると思います」
「ワールドカップ後には世界中から選手、指導者が集まるだろう」
――となると、間近に迫ったワールドカップも十分期待が持てる。
「選手たちは間違いなくレベルアップしています。これまでの日本は決められたプレーをしっかりこなすことは得意でしたが、今は選手自身が試合の中で状況判断をしたり、本能でプレーするような部分でも世界で戦える水準まできていると思います。ただそれは、代表だけでなく、クラブレベルやサンウルヴズ(※スーパーラグビー所属)といった海外での経験も大きい。現在、トップリーグには世界から多くの選手がやってきてプレーしていますが、恐らくワールドカップ後には今以上に世界中からトップレベルの選手、指導者が集まってくることでしょう。そうなれば日本のトップリーグが世界で最も優秀なリーグになる。その可能性も十分あるはずです」
――4年前のワールドカップでは日本中が盛り上がりを見せ、いわゆる「ブーム」を巻き起こしました。
「おっしゃる通り、あれは特異な現象だったと思います。試合を見に来るお客さんはもちろん、試合終了後2時間がたってもスタジアムの周りでサインを求めるファンが待っている。それまでにはないシーンでしたし、今回のワールドカップはあれを再現させる良い機会になるはずです」
ロビー・ディーンズ
1959年生まれ、ニュージーランド出身。現役時代にはオールブラックス(ニュージーランド代表)にも選出された(通算5キャップ)。引退後、クルセイダーズ、ニュージーランド代表、オーストラリア代表などで指導者として実績を残す。2011年ワールドカップではオーストラリア代表ヘッドコーチとして3位に導いた。2014年4月にパナソニック ワイルドナイツのヘッドコーチに就任。2014-15シーズンにトップリーグ優勝、翌15-16シーズンではトップリーグ連覇、日本選手権優勝を果たす。
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